019e : 032f (夢でもありえないようなステージ……) 019e : 0330 (荘厳な会場を舞台にした果林さんのライブ) 019e : 0331 (真紅のカーテンに豪奢なシャンデリア、見事なレリーフが施され
意匠をこらした内装、すべてが壮麗なステージなのに、
そんなものは全然目に入らない。果林さんしか目に入ってこない) 019e : 0332 (ううん、目に入ってこないんじゃない。
果林さん以外を見せてもらえない。
背景ですらシャットアウトされる感覚……) 019e : 0333 (ああ、こんな気持ちにしてもらえるなんて……) 019e : 0334 (鮮烈な魅力で私の目を惹きつける。
自分と同じくらいの情熱を持って見つめないと許さない、って
言ってくれてる……) 019e : 0335 (どうして私は、こんな感覚を忘れていられることができたんだろう) 019e : 0336 ―果林さーーーーん!! 01a9 果林: 0337 はあっ、はあっ…… 01a9 果林: 0338 どうだったかしら? 本当の私を― 019e : 0339 これ以上見せちゃダメ!!! 01a9 果林: 033a え? 019e : 033b ダメだよ果林さん、
これ以上そんな果林さんを見せたら大変なことになっちゃう!
なんていうか、普通に生活できなくなる! 01a9 果林: 033c えっと……? 019e : 033d 果林さんは何もしなくても人を惹きつけちゃう人なのに
こんなライブを見せられたらずっとずーーーっと
果林さんのことしか考えられなくなっちゃうでしょ! 019e : 033e ていうかもう、少なくとも今週1週間分の授業で覚えたことは吹っ飛んだよね。記憶容量って上限があるもん。一瞬も忘れたくないライブを
見せられちゃったらそれ以外はいりません、って脳が言う! 019e : 033f あーーー今も『Starlight』が頭の中で再上映されてる!
再上映されちゃうとどんどん果林さんに頭も心も奪われちゃう!
いや、差し出しちゃう! 差し出さずにいられない!! 01a9 果林: 0340 ま、待って待って! 落ち着いて! 019e : 0341 簡単に落ち着けたら苦労しない! 01a9 果林: 0342 あはははっ、ねえ、キミ全部思い出したのね? 01a9 果林: 0343 今のキミ、私が知ってるキミだわ 019e : 0344 ……あれ? 019e : 0345 ……そういえば……そうみたい…… 01a9 果林: 0346 こっちに来て。もっとよく顔を見せてちょうだい 019e : 0347 えっ、待って、なんでこんな……ええーーーーー!? 01a9 果林: 0348 そろそろ落ち着いた? 019e : 0349 うーん……まだ混乱してる…… 019e : 034a 記憶が戻ったこととかいろいろ……思い出してはいるんだけどね、
そんなことより別のことで頭がいっぱいになっちゃってダメ 019e : 034b 果林さんやみんなに言わなきゃいけないことがあるのに、
どうしてもそのことに集中しきれなくて…… 01a9 果林: 034c あら、どうして? 019e : 034d ……果林さん、わかってるくせに…… 01a9 果林: 034e ちょっとわからないから、言葉にしてくれない? 019e : 034f 恥ずかしいんだけど…… 01a9 果林: 0350 私も恥ずかしいくらい自分をさらけ出したわよ?
キミも同じようにしてくれなきゃいや 019e : 0351 うう…… 019e : 0352 果林さんのライブが、すごすぎて…… 019e : 0353 私が今まで見てきた果林さんのパフォーマンスは、
果林さんが見せてもいい、って思ってる顔だったんだね…… 019e : 0354 みんなに見て欲しい、自分以外目にいれて欲しくない、
誰より一番になりたい、って気持ちをまっすぐぶつけてきてくれてた 019e : 0355 だけど本当はもうひとつの側面が存在してて……、
果林さんの望みの裏側、っていうか…… 019e : 0356 果林さんと同じくらい強い気持ちで私がのめり込まないと
許さない、っていう独占欲 019e : 0357 私、まさか果林さんがそんなことを求めてくれてるなんて
思わなくて…… 01a9 果林: 0358 そうね、キミの思った通りの気持ちを込めて歌ったわ 01a9 果林: 0359 だけど、こんなパフォーマンスをさせたのはキミよ 019e : 035a えっ……? 01a9 果林: 035b 私だって最近まで知らなかったわ、自分のこんな気持ち 01a9 果林: 035c 自分のパフォーマンスに表と裏があるなんて考えたこともなかった。
いつだって全力で臨んでいたつもり 01a9 果林: 035d だけど、あの曲に教えられたの。
私にはもう一つの欲望があるんだ、って 01a9 果林: 035e あの曲は、ただ自分を魅せつけるだけの曲じゃない 01a9 果林: 035f キミが言った通りの激情が隠されてる 01a9 果林: 0360 それは確かに私の中にあったものよ。
だけどずっと私自身も知らなかった 01a9 果林: 0361 キミはそんな秘密を初めからわかって
あの曲のなかに隠し込んでいたのね…… 019e : 0362 いや、そういうわけじゃ…… 01a9 果林: 0363 本当に? 01a9 果林: 0364 キミがなんの確証もなくそんなギミックを入れるはずがないと
思うんだけど? 019e : 0365 絶対にそうだ、って確信があったわけじゃないよ。
そうだったらいいな、とは少し思ってたかもしれないけど…… 019e : 0366 だってこんなの単なる私の欲望だもん。もしも果林さんが
そういう気持ちでいてくれたら、なんて幸せだろう、って…… 019e : 0367 果林さんの曲なのに、自分のわがままを入れちゃうなんて……
本当にごめんなさい 01a9 果林: 0368 ふふふっ 019e : 0369 ……果林さん? 01a9 果林: 036a ねえ、私今、とっても満たされた気持ちよ 01a9 果林: 036b だって、この瞬間、私とキミは秘密の共犯者になったんだもの 01a9 果林: 036c あの曲には、私とキミ、ふたりぶんの欲望が隠されてる…… 019e : 036d な、なんかそれじゃ本来の曲の意味と違っちゃうよ……? 01a9 果林: 036e いいえ、何も違わないし何も変わらないわ 01a9 果林: 036f ただ明確になってしまっただけよ 01a9 果林: 0370 あの曲は自分の欲望を魅せて、貫く曲。
そこにもっと深い欲望が加わっただけ 01a9 果林: 0371 今の私は、もっともっと深くあの曲と融合できる気がする 01a9 果林: 0372 キミがそばにいてくれれば……ね 019e : 0373 果林さん…… 01a9 果林: 0374 なあに? 019e : 0375 もう一回、私のためだけに『Starlight』を歌ってもらえないかな? 019e : 0376 そうしたら、私も覚悟を決められると思うから 01a9 果林: 0377 ふふっ、いいわよ。しっかり覚悟を決めてちょうだい 01a9 果林: 0378 ふふふふっ…… 01a8 彼方: 0379 すっかり元の果林ちゃんに戻ったねえ~ 01a7 ミア: 037a え……ちょっと浮かれすぎてるんじゃない? 01a1 エマ: 037b そうかな? 果林ちゃんはいつも朗らかだよ~ 01a9 果林: 037c はいはい、何とでも言ってちょうだい 01a7 ミア: 037d 別に文句があるわけじゃないよ…… 01a8 彼方: 037e いや……その顔は、なんかあるねえ 01a1 エマ: 037f 果林ちゃんのライブが見れなかったのがそんなに嫌だった? 01a7 ミア: 0380 そっ……そういうわけじゃない! 01a7 ミア: 0381 全然そういうわけじゃないけど! 01a7 ミア: 0382 相談くらいしてくれてもいいじゃん……
ボクだってちょっとは心配してたんだぞ 01a8 彼方: 0383 ん~、それは確かにそうかも~。彼方ちゃんも心配だったよ~ 01a7 ミア: 0384 でしょ? 01a1 エマ: 0385 ふたりとも……
果林ちゃんはこう見えて意外と恥ずかしがり屋なんだよ 01a1 エマ: 0386 あの子にしか見せたくないライブ……だったんだよ、きっと! 01a9 果林: 0387 えっ、エマ!? なんでそんなこと……! 01a1 エマ: 0388 ふふっ、わたしにだって隠し事はできないんだからね、果林ちゃん 01a7 ミア: 0389 こわ…… 01a8 彼方: 038a エマちゃんには隠し事しないようにしよ~っと…… 01a1 エマ: 038b ねえねえ、それより果林ちゃん!
またオーディションに受かったってほんと? 01a9 果林: 038c ええ、まあね 01a8 彼方: 038d おお~、次はどんなことするの~? 01a9 果林: 038e 秘密♪ 019e : 038f うわあ……ガーデンパーティの会場だ! すごい! 019e : 0390 今日はどんなお仕事なの? 01a9 果林: 0391 ちょっとしたドレスを着るのよ 019e : 0392 ドレスか~。果林さん、華やかな服似合うもんね 019e : 0393 それで、私はどんなお手伝いをしたらいいのかな? 01a9 果林: 0394 今日はね、お手伝いじゃなくてお勉強をしてほしいの 019e : 0395 勉強? 01a9 果林: 0396 そう。最近思い知ったのよね。
勉強ってどこで役に立つかわからないからしておくものね……、って 01a9 果林: 0397 でもまあ、今日のは絶対に役に立つからやってほしいの 019e : 0398 ……よくわかんないけど、わかった。見て学べばいいんだね? 01a9 果林: 0399 ええ。じゃあ、着替えてくるから待っててちょうだい 019e : 039a うん! 01a9 果林: 039b お待たせ 039c select: 果林さん!?: 039d select: きれい!!: 019e : 039e 果林さん!? 01a9 果林: 039f ふふっ、どうかしら? 019e : 03a0 ど、どうかしら、って……すごくきれいだけど…… 01a9 果林: 03a1 ダーメ。褒めるなら「だけど」なんて使わないの。
もう1回聞くわよ、どうかしら? 019e : 03a2 すごくきれいです……! 花嫁さんみたい! 01a9 果林: 03a3 キミの? 019e : 03a4 えええっ!? いや、えっと…… 01a9 果林: 03a5 どう? 019e : 03a6 幸せにします…… 019e : 03a7 きれい!! 019e : 03a8 うわあ、すごくきれいだね、果林さん! 01a9 果林: 03a9 ……褒めてくれて嬉しいけど、もっとびっくりしてほしかったな 019e : 03aa びっくりしたけど、それよりきれい! って思っちゃった 019e : 03ab ずっと見ていたいなあ 01a9 果林: 03ac ずっと見ていられる方法、あるわよ? わかる……? 019e : 03ad え!? ええっと……それって…… 01a9 果林: 03ae ずーっと見ていたいなら、覚悟を決めてちょうだいね 019e : 03af き、決めます……! 01a9 果林: 03b0 ふふふっ、私も心を決めるわ 01a9 果林: 03b1 これから一生、キミには私以外を考えられなくさせちゃう 01a9 果林: 03b2 そして、私もキミ以外を考えないわ 01a9 果林: 03b3 ここで誓い合いましょう 019e : 03b4 うん! 019e : 03b5 果林さん! 01a9 果林: 03b6 あら、どうしたの、そんなに慌てて? 019e : 03b7 た、た……大変なことになってる……!! 01a9 果林: 03b8 大変なこと……? 019e : 03b9 この前のウェディングドレスの記事が
スクールアイドル掲示板で話題になってる!!
同好会にもたくさんメールがきてて…… 01a9 果林: 03ba あら、嬉しいわね 019e : 03bb 話題になってるのはいいことなんだけど、記事を見たみんなが…… 019e : 03bc 果林さんに一番似合うドレスをデザインする、って、
なんか競争になってて……
ドレスのデザイン画がどんどんアップされていってて…… 01a9 果林: 03bd ええ!? 019e : 03be 一番になったデザインのドレスを実際に作って
果林さんに着てもらいたい、って…… 01a9 果林: 03bf 実際に…… 019e : 03c0 すごく盛り上がっちゃってるんだけどどうする? 大丈夫かな? 01a9 果林: 03c1 私は着るわよ、一番になったデザイン 019e : 03c2 あ、着てもらえるの? 大丈夫? よかった~!
じゃあ、デザイン画のコンテストやっちゃおうか。
私、投票システム作るね 01a9 果林: 03c3 ちょっと待って、キミがやることは別でしょ? 019e : 03c4 え? 01a9 果林: 03c5 キミは私に誰かがデザインしたドレスを着てほしい?
それともキミ自身がデザインしたドレスを着てほしい? 019e : 03c6 ……………… 01a9 果林: 03c7 どう? 019e : 03c8 今すぐドレスのデザインを考えて、私が一番になります…… 01a9 果林: 03c9 よろしい! 01a9 果林: 03ca ふふっ、キミがデザインしてくれたドレスを着るの、
楽しみにしてるわね!